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2008.9
2008年9月 のメッセージ集

昨年、八ヶ岳「北杜国際音楽祭」2007が終わるのを待ち構えるように、11月4日(3日公開GP)に徳島で行われた2007年国民文化祭グランドフィナーレのリハーサルが迫って来ていた。地元の徳島祝祭管弦楽団、徳島邦楽集団、徳島県合唱連盟によって夜のパート2で初演される《ふるさと交響曲》は夏前から練習に入っており、「三木オペラ舎」としての初仕事となるフォークオペラ《幸せのパゴダ》は、東京で8月下旬からコレペティ稽古・音楽稽古が始まった。10月からの立ち稽古では、台本・演出の岩田達宗の楽しくも厳しい練習で、出演者たちは日が経つのが惜しいと口々に満足感を表明していた。

その練習中に、私は香港中楽団HKCO=Hong Kong Chinese Orchestraが主催する「第4回中国音楽国際シンポジウム」の講師として10月13日から16日香港を訪問した。私に求められていたプレゼンテーションの内容は「異なったアジアの国々における伝統音楽の遺産と改革」というもので、私自身の実践の報告でもあり、アジア共通の問題を提起して来た私にとって、英語で纏めるいいチャンスだと考えた。
しかし私は13日夜のHKCOのコンサートで予期せぬ感動に打ち震えた。…以下全文

そしていよいよ国文祭だ!《幸せのパゴダ》チームは11月はじめから徳島入りしてクレメントホテルと郷土文化会館の間を往復しながらこのユニークなフォークオペラの仕上げに取り組んだ。…以下全文

国文祭のあと、『楊静と結アンサンブル』が11月21日くらしき作陽音大、23日四国中央市土居記念館、25日徳島県阿南市コスモホールでコンサートを持った。今年「よんでん芸術文化賞」を下さった「よんでん芸術文化財団」の派遣助成のチャンスと合わせ、…以下全文

昨年新国立劇場で世界初演されたオペラ《愛怨》のハイヴィジョン録画がDVDとなって世界中に発売される計画が(株)TDKコア(日本での発売元はコロンビアレコード)で進められているが、更にこの先に、収録済みの《源氏物語》と《じょうるり》も合わせ、誠心誠意このプロジェクトを推進してこられた「結の会」の落合良会長が昨年から各種権利問題の解決に努めておられるが、もう一歩のところにいる。新しい予定どおりだと発売は2008年4月、ご期待ください。
5月10日追加情報】 《愛怨》DVD発売のための権利問題は、落合さんたちの努力が実って見事にクリアされ、(株)クリエイティヴ・コア(社名変更)/(株)コロンビアミュージックエンターテインメントhttp://cc.columbia.co.jp からDENONレーベルで5月21日に発売・販売開始される。…以下全文

12月になって朗報が続いて入ってきた。共に文化庁「本物の舞台芸術体験事業」に採用されたというニュースである。…以下全文

2008年1月29日から2月2日にかけてスイス・フライブールで行われる宗教音楽作曲コンクールの本選のため、今70近いアカペラ合唱曲作品の譜面を見ている。イタリア語のダンテ「神曲」のどこかの部分をテキストとするユニークなコンクールだが、スイス・イタリア・オランダ・ポーランドの専門家たちとじっくり審査するのは、言葉がイタリア語だけにシビアなことではある。
【事後追加】1月28日成田を出発、パリ経由でチュリッヒに到着、列車でフリブール(フランス語が2/3を占める地域で、最近は公式にこう呼ぶことになったそうだ)に向った。直行との情報と違ってベルンで乗り換え、それもエスカレーターのないあたりの車両に乗っていた、ぎっくり腰気味だった私には、3分で3番線から8番線に移るのは一大事だった。たまたまヘラクレスのような人がいて荷物運びを手伝ってくれ、本当に助かった。 …以下全文

コンクールが終わると2時間移動して美しい街ルツェルンへ。2月3日にChamber Soloists Luzerneが「三木稔室内楽作品コンサート」を催してくれるのだ。昨年の北杜国際音楽祭で素晴らしいチェロを弾いたユルグ・アイヘンベルガーがリーダーで、ルツエルンに住んで6年目になるシズカ楊静も客分である。《東の弧》《弦楽四重奏曲》《マリンバ・スピリチュアル》《秘曲 愛怨》など、楽しみなプログラムを知らせてきている。
【事後追加】フリブールをたつ日の朝、起きてみたら雪! なんと11月半ばから暖冬の西ヨーロッパではクリスマスプレゼントもなかったのだ。真新しく、美しく化粧したスイスの風景を堪能しつつ、列車で1時間40分のルツェルンに向う。駅に迎えに来てくれたシズカ楊静夫妻の車で彼らのマンションへ。…以下全文

2006年11月、アメリカのオースティンで8000人が世界中から集まって開かれたPASIC(全米打楽器協会国際コンヴェンション)でTAMU(Director: Brian Zatoh)が演奏した“New and Unknown Percussion Works of Minoru Miki”が、新たにスタジオ録音されて”Sohmon III”のタイトルでCD化され、スイスから帰国と同時に我が家に送られてきた。…以下全文

2月28日にはイギリスのミッテンバルド・ピアノトリオが来日、ルーテル市ヶ谷教会で《ピアノ三重奏曲》を演奏してくれる。26日にはレコーディングもするそうだ。
【事後追加】公演は熱く、和やかに行われ、この《ピアノ三重奏曲》の入ったCDは、ミッテンバルドのレーベルで、最終編集作業中。【再追加】CD番号MTWD-99036、Mittenwald からBellarti Trioによる《ピアノ三重奏曲》が発売された。

3月11日、四谷区民会館ではオーラJの第21回定期演奏会。1967年の日本音楽集団時代に私が創案して、普通に道を歩いている人々により近い感覚のプロジェクトとして始めた「ニューかぐら」という様式で、69年、オーラJでの02年に続く4回目。今回は歌と語りに舞踊や身体表現を加えた公演。私の曲は、歌楽《鶴》に加え、三味線の王子様 野澤徹也のために満を持して作曲中の《三味線協奏曲》の初演をトリとする、痛快なコンサートになるはずだ。
【事後追加】このコンサートは、企画した私の想定以上に多くの方々から好評を頂いた。…以下全文

5月5日11:00から、千葉の稲毛記念館のロビーコンサートで、今年始めに書き上げた尺八・新筝二重奏曲《希麗》の初演が尺八:萩原蘊山、新筝:樹本佳音里のデュエットで行われた。この作品は、常々このホームページを管理してくれている萩原さんに感謝をこめて作曲したもので、アマチュアとは思われない安定した立派な演奏で、8分を堪能させてくれた。若い命の健やかに育つことを希求しつつ、優しく、易しく作曲したが、13絃筝ヴァージョンも創れば、たくさんの人に演奏してもらえるとの確信を持つことができた。

同じ5月5日、東日本打楽器協会恒例の打楽器フェスティヴァルが代々木のオリンピック・センターで行われ、私のマリンバ・打楽器の3作品が午後にまとめて演奏された。《マリンバの時》をソロした塚越慎子は、欧米で《マリンバ・スピリチュアル》と並んで、無数のソリストが演奏しているこの曲を、極めてリーズナブルな表現で完璧な演奏を聞かせてくれた。後でプログラムを見て知ったが、パリのコンクールで優勝したというのは確かにうなずける。この曲の生演奏では久しぶりの爽快さを味わった。ありがとう。

5月18日、創立10周年を迎えた徳島邦楽集団が、積み重ねてレパートリーにしてきた私の作品が《ダンス・コンセルタント 四季》《瀬戸内夜曲》《ホタルの歌》《三つのフェスタルバラード》等7作にもなった徳島邦楽集団が、08年の定期演奏会のこの日、三木作品特集でやるという。ありがたいことだ。上記最初の3曲は私が指揮をすることになるらしい。…以下全文

5月21日には日本音楽集団が、できるだけ多数の演奏者をステージ一杯に載せて《巨火(ほて)》をやりたいという。それは願ったり叶ったりだ。…以下全文

6月7日(土)午後、銀座王子ホールで「結の会」20周年記念公演として、久しぶりのシズカ楊静(ヤンジンYang Jing)東京リサイタルが行われる。実は1998年の10周年公演も、日本でまだ名もなかった楊静(その頃まで「ヨウ シズカ」と呼ばせていた)のリサイタルを同じ王子ホールでやった。…以下全文

第3回を迎える八ヶ岳「北杜国際音楽祭」2008年は8月22日(金)から31日(日)まで行われた。北京オリンピックとの兼ね合いもあって、22日は「全国現代邦楽合奏団コンヴェンション」の講習で始まり、23日(土)の「オーラJ+日中韓新筝(21絃)」演奏会をプレ・コンサートとし、ユニークなFringe festival(周辺、もしくは参加公演)のコンサートを3回挟んで、27日(水)にオープニング・コンサート、31日(日)がクロージング・コンサートになった。今年は東西交流の象徴のような楊静やアジア アンサンブル、結アンサンブル、そして昨年好評を得た「東西オペラアリア・コンサート」はもちろんリストアップしているが、ヨーロッパからの招聘はザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団のプリンシパルで構成する弦楽カルテットが西の目玉である。
…以下事業報告を主に、全文

2000年にアメリカで世界初演、2001年英語で日本初演されたオペラ《源氏物語》の日本語版は英語版と並行して作曲されているが、残念ながら初演はまだ行われていない。しかし今回「源氏物語千年紀つるおか企画」として三木稔作曲オペラ《源氏物語》ハイライト・コンサートが山形県鶴岡市で企画され、10月7日鶴岡市文化会館、5日(日)にはプレコンサートが14:00から東邦音楽大学川越キャンバスのグランツ・ザールで行われる。
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【事後追加】このハイライト・コンサートは私の予測を遥かに超えて有効なプロジェクトであった。2001年日生劇場で行われたセントルイス・オペラ劇場の英語による日本初演は、極めて音楽的・芸術的(HP内「三木オペラ作品への招待」参照)で、ヴィジュアルにも背の高いアメリカ人のほうが架空の平安貴族を演じるのにむしろ向いているのではないかという、聴衆の声が圧倒的であった。しかし日本語字幕付外国語上演が常にそうであるように、言葉に反応してオペラの真髄や歌手の表情を理解することは不可能である。その点、きちんと書かれた日本語でアリアや合唱が歌われるときの、この分かりやすさ、隅々までドラマに感応するということの尊さは何という感動であろう。
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10月18日(土)、19日(日)に3ステージ、名古屋芸創センターでの創作日舞「幻花」は壮絶な舞台であった。私の《巨火》に感動された演出の伊豫田静弘、制作の関根正両氏が、《巨火》の前に《ダンス・コンセルタントI 「四季」》を加え、CDの演奏を使ってではあるが合わせて約1時間。常識的には《巨火》を日舞で演じることはかつてありえなかったと思う。しかし作舞の内田寿子氏は、そのありえないことを見事に現前させた。おそらく海外で上演されたら大スタンディング・オヴェイションであったろう。

岩田達宗から改訂台本を得て、3月から始めた《幸せのパゴダ》本格オペラ版のヴォーカルスコアが、劇中劇を完全に入れ替える第8場を除いて8月半ばに完成している。【事後追加】この秋、台本未着の劇中劇を除いて第8場を完成させた。フォークオペラ版の作曲は2006年9月より07年7月までかかっているので、その部分を合わせて、既に1年半を完全オペラ版《幸せのパゴダ》のデッサン(ヴォーカルスコア)にかけたことになる。続けてオーケストレーションに入るが、台本がスリムになり、全てのセリフを歌化、器楽伴奏化、そして4人だったアンサンブルがオーケストラ化され、演劇性が前面に出ているフォークオペラ版と比べて、音楽空間が数倍に拡大される。完成は09年夏前の予定であったが、初演を決めて取り掛かったオペラではないので、オーケストレーションには悠然と時間を掛け、初演する機関や劇場が決まり次第、それに合わせて完成を決めようと方針を変更。いずれにせよ「三木稔、日本史オペラ連作」では20世紀題材の第9番になり、このシリーズの団円となる予定なので、いい世界初演を期待したい。

パゴダの作曲に並行して、オーラJの《羽衣》が11月近畿地方、東京室内歌劇場の《うたよみざる》が12月東北・北海道の学校を、文化庁の「本物の舞台芸術体験事業」として巡演される。私は《羽衣》の指揮で参加する。《うたよみざる》の演出は、大御所栗山昌良先生がやられるので、12月1日弘前の初日は是非見に行くつもりだ。

その前日11月30日、上田収穂指揮の徳島少年少女合唱団が、徳島邦楽集団の賛助を得て《阿波の子タヌキ譚》を定期で久しぶりに演奏する。この曲は、もう37年も前の1971年、四国放送がラジオで参加して芸術祭優秀賞を受賞した富士正晴作詞の秀逸な作品。素晴らしい実績を積んでいる両団体が手を結んだ今、故郷徳島の生きた文化財というか、名物レパートリーになってくれると嬉しい。聞くたびに、私だけでなく県民全ての、生活に疲れた心が癒され和むこと必定である。ちなみに来春は、徳島邦楽集団の定期に少年少女合唱団が賛助するそうだ。

私が45年も住んでいる狛江市でも、ほほえましい企画が進行している。東京都の離島の子供たちとその家族を招待して狛江市エコルマホールで12月13日(土)13:30から、かつて歌座のレパートリーとして、工藤直子の詩に作曲した《のはらうた》21曲を榊原徹がオケの伴奏にアレンジ、子供ミュージカル「のはらのファンタジー」として宇佐美瑠璃他の歌手で上演される。謡い語り:石鍋多加史、新筝:藤川いずみのコンビによる歌楽《べろ出しチョンマ》も同時にやられるので期待で一杯だ。

2009年の企画を一つ。3月18日(水)四谷区民会館でのオーラJ第23回定期で、《羽衣》に続く「邦楽器による伝説舞台」第2弾を、今度は、私が1982年に名古屋グリーンエコーの委嘱で山崎正和台本に作曲した合唱劇《峠の向かうに何があるか》を原作とし、《浄瑠璃姫物語・異聞》のタイトルで初演する。伊豫田静弘脚色で、コンサート形式ながら伝説舞台の名に恥じないプロジェクトにするつもりだ。

三木 稔