コンサート評

楊静&結アンサンブル<三木稔作品演奏会>
音楽の友 02年6月号

小倉多美子

 噂には聞いていたが、これほどの名技だったとは。シズカ楊静(Yang Jing)は、中国、日本、欧米で活躍する、スーパー・テクニックと創造力を備えた中国琵琶のヴィルトゥオーゾ。
 楊静と結アンサンブル【三木作品によって随時編成。今回は三木希生子Vn、橋本しのぶVc、臼杵美智代(打楽器)、浜川潮Pf、榊原徹(指揮)】により全曲三木作品で。
 琵琶ソロの《江上流韻》(楊静自作カデンツァ付)では、原作(琵琶行)の詩人(白楽天)さながら、心を誘う繊細な歌と,虜にする激しい語りに心を奪われた。
 臼杵との《交流》でも堪能したが、楊静の即興は創造力に富んでいる。
 《東の弧》(01年作曲、今回初演。琵琶、Vn,Vc,マリンバ&打楽器)は、『水田幻想』『琵琶夜曲』『渚の踊り』『艶歌』『古の戦い』という風景が琵琶に歌われ、柔らかな弦と、トレモロのマリンバで豊かな情感性を醸成するなどしながら、アタッカで描き継がれる。終われば詩情豊かな音像が心に残るスケールの大きな作品だった。

《平安音楽絵巻》(初演。ピアノ・トリオと琵琶、指揮) 他も。
(4月20日・津田ホール)


三木 稔