《花凛》


11月には、今年初演された13絃箏のソロ作品と合奏の2曲が、間に半月を置いて舞台に現れた。11月1日に銀座王子ホールで初演された13絃箏ソロの《花凛》を委嘱してくれた榎戸二幸さんは、毎年王子ホールでリサイタルをしているが、前に《秋の曲》を演奏したら大変評判がよかったと、2年近く前に新作をと頼んできた。新箏(21絃)も弾くらしいが、今回は13絃でお願いしますというので、立ち止まって考えた。「よし、《箏譚詩集第1番》のように日記風・具象的でなく、伝統的で8〜9分位続く一貫した三木メロディーを通した13絃の代表的な独奏曲を残す姿勢で取り掛かってみよう」と。
 たまたま本番が聞けないのでGPを聞きたいというので榎戸さんに紹介した若い音楽評論家が、聞いてすぐメールをくれた。「《花凛》、なんと透明な美しさでしょう。このような洗練と枯淡の境地をみずみずしく歌える三木先生と榎戸さんの出会いを何よりも嬉しく思います」と。私には本番の演奏は、意気込みが過ぎて構成感のまとまりを欠いたように思えたし、本人も不満そうだったが、当日演奏された曲でダントツに人気があったそうだ。若くまじめな榎戸さんには花の凛々たる様をイメージしたこの曲のように、大きな未来があると期待したい。


三木 稔